今月のヴラド・ドラクラ

アニメ・漫画ヴラド・ドラクラ

明けましておめでとうございます!今年はねんがんの辰年ですよ!!
ドラフェチとしては新年イラストにめちゃくちゃサティスファクションしたい!!と思っていたのに、無慈悲な大地震でもうめちゃくちゃ。
被災地の方々が本当に可哀想でなりません。こっちも結構揺れてビビりました。
年末には遊戯王のブルーアイズフィギュアも届いたんですけど、デカすぎて飾るところがありません…。
早く掃除が容易にできる身体になりたいですね…(五十肩の呪いで何もできない)(逃げるのも困難)

一応ヴラドもドラゴンに縁のあるキャラクターなので、ヴラド・ドラクラにとっても良い年になるといいなあって期待してます!
まあ私の感想は相変わらずオスマン帝国民なんですけどね……

ところで今年の書物復権になんとアンドレ・クロー本『メフメト二世 トルコの征服王』が入っています!!
レア本すぎてすごい高騰しているので、メフメトに興味あって読みたい方はこの機会に投票しておきましょう!!
これがメフメトについてまとめた唯一の和訳本ではあるのだが、訳が昔すぎっていうかカタカナ固有名詞が全く正しく読めてない感じの本なので、そのまま復刊するとなかなかキツイものがあるので改訂を加えてほしいですね。その手間で復刊候補から弾かれてもまあ仕方ないかな…と思いつつ、お気持ちは送ってみました。
英語が読めるならフランツ・バービンガーの『Mehmed the Conqueror and His Time』がやはり情報量も多く最強のメフメト本なので、私はそっちをおすすめします。こっちはなんで和訳されなかったんだろうなあ…。

ヴラド・ドラクラ感想

とにもかくにもトゥルスン・ベグがマジのマジに登場してきた~~!!??とお祭り騒ぎ。

 大窪先生、あなたも塩野七生のメフトゥル小説『コンスタンティノープルの陥落』に脳を焼かれた御方……信じていたよ!!何よりオスマンのネームドキャラが増えてめちゃくちゃ嬉しい!!
 この登場はちょうど連載中にトゥルスン・ベグ『征服の父メフメト二世記』の完訳が世に出たからこその奇跡かもしれず、本当にギリギリ滑り込みになりましたね。
 美しく雅な文章を書けるトゥルスンくんは敵対者への悪口も流れ刺すかのように書きまくっているので、その中でもワラキアの章である「まつろわぬ不信者」が採用されてて笑いつつ、史実トゥルスンが敬愛したマフムト・パシャにもちゃんと触れてくれて泣いちゃったわよ!もうここまで来たら名前そのまま出してくれてもいいんじゃない!?マフトゥルてぇてぇですわよ!?

 でもバッドエンドなんだ…スルタンは人の心がないから……
 キャラデザめちゃくちゃ目が死んでいて、そら…そうよ……!!と涙しましたね。

 漫画でも書きましたが、トゥルスンはガチで『仮にもし聖なる書物と預言者たち無しとても、人民生存の秩序には彼の確固たる見識にて足る』と書いているほどマフムト信者です。初めてマフムトさんに呼ばれて地図制作の仕事任されたときに、法悦状態のスーフィーのごとくターバンを放り投げて頭を地に擦りつけたとか書いてるので相当です。あとマフムトさんはちょっといい性格してるので、他人を使って遠回しに人をからかうこともあるんですが、マフムト愛忠誠心を疑われたトゥルスンはその詩人をカッとなってやっちまうほどだったようですね…こわ……。
 そんなトゥルスン、マフムトが死んだのと入れ替わるかのような登場、マジで悲しすぎる……。
 いやマジでマフムト・パシャが処刑されたのはまさにこの年の夏なんで、まだ心の整理もついてない状態だと思うんですよね。トゥルスンの決死の諌めは、後追い自殺も兼ねた自棄っぱちに見えちゃいましたね。ちょっとメフメトに対して冷めた態度も仕方ないっていうか、むしろなんでマフムト様の言葉には耳を貸さなかったのに私の言葉は聞き入れるのか…と帰って余計に鬱になってそうで可哀想やで。
 もちろんマフムトもメフメトの病にはヴェネツィアから医学書を取り寄せたりと気にかけていたので、そんな亡き上司の意志を継ぎたいトゥルスンくんがメフメトを見捨てるなんてできるわけないんだなあ…。

 しかしマフムトが死んだばかり、すなわちメフメトの息子ムスタファ皇子も死んだばかり、ということになるのですが…
 この征服王、まるでその死が堪えた様子がない……!!
 ヴラド・ドラクラのメフメト、マニサ時代もやさぐれた様子を見せてないので「まあ、なんか切り替え上手な人なのかな…」と流せなくもないのですが、この男はヴラドのことばかりはお通夜みたいな顔してずっと引きずっていた姿を晒している!!そうは問屋がおろさんぜよ!!
 前回のヴラドもそうなんですけど、メフヴラ揃って毒親育ちの負の再生産してないか?
 いまいちカプ萌えに踏み切れねえから、このさい親バカ対決で決着つけてもいいんだよ?(震え声)
 ちなみに史実のメフメトはムスタファ皇子の訃報を聞いて普通の親の反応してるんで安心します。

使者がイスタンブールに到着したが、彼はこの悲劇的な知らせをスルタンに伝えるのを恐れた。実際、ホジャ・シナン・パシャを除いて、誰もスルタンの御前に参上する勇気は持てなかった。ホジャ・シナン・パシャはスルタンの古き腹心であり師傅で、しばしばスルタンの怒りを買いつつも、誰よりも上手くメフメトと付き合ってきた男だった。その彼が黒い喪服を着てスルタンの元へ赴いた。その姿を一目見て、スルタンは何が起きたのか察した。そして座っていた台座から崩れ落ちた。部屋に敷かれた絨毯を握り掴みながら、息子の悲運に対して大きな叫びをあげながら東洋の儀礼に沿って慟哭した。深い悲しみを示すため床の隙間から埃を集めて頭にかけ、顔を平手打ち、胸と太ももを叩いた。その間、ずっと深い溜息を吐いていた。アンジオレッロによれば、メフメトは三日三晩ほど失意の底に沈んだ。嘆くのをやめたとき、彼は市場に三日間ほど店を閉めて喪に服す勅令を出した。「街中が深い哀悼に包まれた、なぜならムスタファ皇子は父親に最も愛された者であり、彼と付き合いのあった者たち全員から愛されていたからである」

アンジオレッロの記録が正しければ、ムスタファ皇子は1474年6月に亡くなり、大宰相マフムトが再び召喚され処刑されたのは同年7月18日、我々はどうしてもこの2つの出来事を関連付けたくなる。

Franz Babinger”Mehmed the Conqueror and His Time”331p

 というわけなので、最愛の上司をぶっ殺されても、子に先立たれたばかりの親に対してはグッと堪えるわけしかないんですねトゥルスンくんは。メフメトがいくら征服病で元気そうに見せかけていても…。

 それにしても通風でお水ガシャーンと落とす姿に、あー!私も五十肩だからよくやるやつー!!と妙な共感を覚えてしまった。悲しいなあ。
 というか御前会議では殊勝に水飲んでみせるくせに、プライベートのハマムシーンでは医者に咎められても酒ガバ飲み男で、地味にええ格好しいやつだなと笑いました。推定ヤクップ医者のキャラデザがメフメトのラクガキに似ているような気がするのだが、気のせいだろうか?
 あと胸毛とすね毛のチラリズム見せられると指毛も描こうや…と思ってしまうルパン三世通過ファンなのであった。というかスルタンなら髭もっとモサモサにして!!なんだその中途半端な口ひげは!!ヴラドとおそろっちですか!!???
 話は通風に戻りますが、オスマン帝国外伝のスレイマンも通風でめちゃくちゃ関節はれて苦しんでましたが、メフメトはまだ通風初期っぽい感じね。養生しなされ。それでも既に年齢は40ちょいくらいまで来ているから、あなたの寿命もあと10年もないですわよ…。
 床に伏すくらいなら戦場で死ぬわ宣言はカッコいいコマでしたが、実際己の寿命を悟って夢を諦める様子がトゥルスン本に載ってますが結構泣ける感じだし、結局イスタンブールの近所の港で没するところが悲哀な最後。    
 そんななのにヴラドの回想の中のメフメトがいつもニヒルな笑みを浮かべていて元気そうなのが気になりますわよ!!いくらでもサンドバックにしても死なないくらいに思ってそうな感じだが、実際メフメトが病で弱ってる姿を見たらショック受けたりするんだろうか…?それか「病死で勝ち逃げなんて許さない…」とか無茶苦茶なこと思ってそうな怖いタイプですか?
 メフメトくんはスカンデルベグの病死訃報にクソダサガッツポーズ決めてる男だし、多分ヤーノシュにも同じことしてるけど、ヴラドのときはラッキー!!と思わず泣いてほしいなあ…私はそれが楽しみで楽しみで……(人の心がないのは私だよね)(ぐうの音もでねえ)

 そしてマフムトさんを差し置いて、ハディム・スレイマン・パシャがネームド初登場。
 すなわちモルダヴィアが一回防衛に成功するところから描く構成が確定し、えっ!8巻は最終巻ではない!?9巻構成でないとこんなにオスマンにページ割けなくない!?とびっくりしましたね。
 さておきスレイマン・パシャは最後のボスキャラとして厳つい人物にキャラデザしてあって怖い感じですが、バービンガー本によれば実際の彼は宦官出身です。ハディムがそういう意味なのです。アンドレ・クロー本はハイレッディンと訳されているが、多分バービンガー本のほうが正しいね。ぶっちゃけアンドレ・クロー本は復刊しても今に耐えられる訳じゃねえだろ…改訂不可避!!
 バービンガー本によれば、スレイマン・パシャはボスニア出身で、少年時代に攫われて去勢され、ずっと美しかったがためにメフメトに性奴隷にされていたといわれるお気に入りです。トゥルスンもボスニア人は愛らしく白人碧眼美形ばかりの国と紹介してるので、そこの出身であるスレイマンがそういう人物であったことに疑いはなさそう。なので、こいつは少なくとも三回くらい結果出せずにいる役立たずにも関わらず、メフメトの寵愛があるので首が飛びません。バービンガーも「メフメトお前なんでこいつまだ起用し続けるの…」って感じで暗に書いてる文章なのがウケる。だから最後に結局メフメト自身が始末つけにモルダヴィアに来たってことなんですね。
 へっ、デレデレと見た目コネ採用のあげくガチ有能マフムトさん処刑するから、お前が楽できなくなって寿命が縮んだんだよバーカバーカ(推しに辛辣すぎない?)
 マフムト・パシャが見殺しにしたとケチつけられていた前任ルメリ・ベイレルベイであるハス・ムラト・パシャも顔が良いだけの無能感にあふれているので、晩期メフメトの人事採用見てるとなんか征服マシーンやめてる感ある。ぼんくらセリムのためにソコルル・メフメト・パシャを残していったスレイマン大帝のほうがまだ人を見る目が残っているというか…。つまり三大欲求に目が眩んでるメフメト、お前もただの人間か…感がすごい。だからこんなこといっちゃなんですけど化けの皮剥がれる前に完全無欠なファーティフイメージのまま死ねてよかったのかもしれないね……。あの世でマフムトがSSR人権人材すぎたのを噛み締めてくれよな!!
 ところでスレイマン・パシャの名前が出てくるコマに、後ろでトーン状態の幽霊さんがいるのがすげー気になります!!怖いよ!!電子書籍じゃなかったら気づかなかったかもしれない?!

 それにしてもストイカさんってばまだワラキアに呑気にいて驚きよ!!
 ライオタ・バサラブがオスマンに乗り換えた以上、シュテファンくんの目でもあるストイカさんは邪魔者として殺されてもおかしくないんだが…。それともヴラドの改革も虚しく、また貴族政治に戻っちゃってるんですかね???ヴラドにはお座りができるストイカさんだが、ライオタにはアルブムーブしててもまあおかしくないか。
 ライオタ・バサラブ自身がそこにいたかどうかは知らんが、オスマン軍にワラキア勢はいたのでバレア・アルバの戦いがどのくらい総決戦になるのか気になりますね。
 あと行方不明なラドゥくんの動向も気になる。あんだけ読者にヘイト貯めさせたであろう男が落とし前つけられたところも見せずに逃亡なんて許しちゃいかんやろ…マーチャーシュくんはちゃんとクソダサ敗北姿を見せてんのにさあ!!
 まあ史実のラドゥくんもいつのまにか消えてる感じと言えばそうなのですが、逃げ帰ってきたラドゥくんをゴミのような目で見るメフメトは見たかったかな…(篠田小説でやったね)

 次回は3月のハルタです。待ち遠しいです。きっとその頃には私の五十肩もだいぶ回復してるのではと思うので…。
 今年はまだ今のところ暖冬ではありますが、体調に気をつけてお過ごしください。


Posted by tiriw

inserted by FC2 system