コンスタンティノープルの陥落

オスマン帝国オスマン帝国,メフメト二世,ヴラド・ドラクラ

はるか昔の1453年!5月29日!
コンスタンティノープル陥落!!

たまたまその一週間前くらいに、塩野七生の『コンスタンティノープルの陥落』をちょうど読み終えたところだったので、タイムリー!と思いました。
しかし利き手を地味に負傷してもいたので、結局この記事の公開は6月になってしまったのであった。
というわけでイラストも落書きクオリティです!辛かった、お絵かきできなくて……。

漫画『ヴラド・ドラクラ』にハマっているので、そちらとも絡めながらの感想になります。
『ヴラド・ドラクラ』では宿敵キャラとして登場するメフメト二世のこの偉業はわずか3ページでまとめられてしまっていますが、『コンスタンティノープルの陥落』を読んでみるとなかなかドラマティックな攻防が臨場感溢れる描写で繰り広げられていて、とても面白かったです。
オススメしていたドラクラ民様に感謝。

昔の本なのでメフメトの表記はマホメッドだったのですが、この感想ではメフメトと書きます。オスマン帝国外伝で聞いていてもメフメトのほうが発音正しいと思うので。カリル・パシャとかも正確にはハリル・パシャらしいのですが、『コンスタンティノープルの陥落』だけを読んだ人が混乱するといけないので、メフメト以外の人物は『コンスタンティノープルの陥落』で使われている表記で書きますね。
でもマホメッド…何か大賢者の響きがあるな!!と厨二病的ときめきを感じてしまったのは否めなかった。

メフメト二世という男

 私のオスマン帝国知識はほぼスレイマン周りに偏っていたので、メフメト二世のことはそのサブ補完程度であまり詳しく知らなかったので、序章から大変興味深く読めました。
 征服王ことファーティフの自称が強すぎるあまり、生まれながらにして何でも恵まれていた天才で常に勝ち組の人かと思いこんでましたが、実際はわりと不遇な青春時代を送っていたようで、若者らしくトライ&エラーをめげずに繰り返しながら成し遂げた偉業だったというのが分かって、一気に親近感が湧きました。ただのサイコパス征服マシーンじゃなかったんだな!!(超不敬発言)
 でもやっぱりサイコパスって何かしら家庭環境に問題があって生まれるもんだなって、ここまでの大物になるまで彼の反抗期をクライマックスまで高めた父親ムラト二世とカリル・パシャに現代トルコ人は感謝しなくてはならぬとも思いました。

 以前、家にあるオスマン帝国の本を読んだとき「幼少期はコーランの暗唱もできないほどだった」と書いてあったので、ふーん?頭良かったのに何故だ???と不思議に思ってたんですが、この『コンスタンティノープルの陥落』や『メフメト二世 トルコの征服王』を合わせ読んだところ、上の兄弟が全員死亡するまでは本腰入れてイスラーム教育されてなかったのかとようやく腑に落ちましたね。
 そんな感じで、メフメトは親父から全然期待されてなかった三男坊だったんですね。
 スレイマンの子供たちでも最後に生き残ったのは三男セリムでしたが、今ではとても運命的というか必然の結果だったのかなとすら思えてきました。メフメト二世と同じ三男に生まれ、スレイマンの親父と同じ名をもらったのですから。なんというか全てが皮肉そのものでできている存在ですよね、セリム。しかもメフメト二世の兄弟殺しって実は異母兄弟にやらかしたと知って、じゃあ正真正銘の実の兄弟をぶっ殺したセリムのほうがやばくね???と何だかセリムのこと見直しちゃいましたね私!親子揃って親父より爺さん似というわけか!と納得しました。
 まあそんな感じで話はメフメトに戻りますが、彼は周りの大人から舐められっぱなしの青春時代を過ごしていたようです。自由人すぎる親父が隠遁するために、わずか12歳で即位したものの、こんなショタが?!とイェニチェリも大暴走し、ヨーロッパ人もここぞとばかりに舐め腐って反撃してくる。やっぱおまえじゃ無理だわ(当たり前だ)と速攻で親父とカリル・パシャに退位させられているので、実はヴラド公と結構似たような流れで辛酸を舐めていたという!
 しかも裏にどちらもハンガリーのヤーノシュ・マーチャーシュの影響が強くあるわけですから、メフヴラにとっては色々な意味で因縁のお家なんですね。マーチャーシュ家。メフメトの額の傷もヤーノシュとの戦いでつけられたものらしいですから、ぶっちゃけヴラドよりマーチャーシュのほうがメフメトの宿敵感がある(言っちまったなあ!) それどころか同じように人質時代を送ってきたアルバニアのスカンデンベルクのほうがムラト・メフメト親子と互角に渡り合ったヴラドの上位互換って感じなので、まあ……ドラキュラ効果ってすごいよね!ブラム・ストーカー様様である。

 親父の勝手でマニサに再び追いやられてからは、小説では性別関係なく乱交に明け暮れる自暴自棄な生活を送っていたと書いてあり、これはヴラドぜってえ食われてるだろ……と確信し序章から盛り上がる腐女子であった。私はメフメト総攻め派なので、メフメト×トルサンにも大変萌えました。一般小説でホモに遭遇したときの高揚感ったらないよね!
 しかしまあ『ヴラド・ドラクラ』のメフメトは全然そんな気配ないですよね。彼がヴラドと出会ったのはちょうどその一番クサクサとしていた時期だと思うんですけど、むしろ明るいまである。『メフメト二世 トルコの征服王』という研究本でもそういう描写は書いてなかったので、ここは塩野先生の脚色なのかもしれません。ありあまる時間をここぞとばかりに勉学につぎ込み、来たるべき将来にむけてヴェネチア船に喧嘩売りながら前向きに生活しているっぽい感じでした。しかし状況的に塩野先生の解釈のように不貞腐れていても致し方ないですし、ロリショタが趣味だったのは事実っぽいので、どっちのメフメト像もありえるんじゃないかと私は思いました。そしてメフメトとヴラドはほぼ同い年なわけですが、14歳から見たロリショタって?と考えると、メフヴラは十分に有り得ると思いました(推しカプを諦めない)
 そんなメフメトですが、一応いいとこの嫁さんも貰っているようでした。全く手を出さないどころか無視していたようですが。なんだこのブレないホモは……と思いましたが、『メフメト二世 トルコの征服王』によると、この嫁さんは親父が組んだ縁組だったらしくて、なーるほど!とメフメトに同情しました。結婚式って親のためにやる部分もあるわけですが、それでも本人が乗り気でない結婚式を3ヶ月もやったって、ムラト…おまえ……そういうとこやぞ……。親父が死んで万々歳しちゃったメフメトを、少なくとも私は責められんぞ。
 そんなメフメトのママはというと、セルビアかマケドニアらへんの出身の奴隷女性だったらしいです。
 つまり私は思ったのです。母方のルーツに精神的な故郷を見出し追い求めたからこそコンスタンティノープルを征服したのではないかと。もちろんアレクサンドロス大王に憧れていたというのも事実でしょうが、青春期に親父にあれだけ自尊心へっぽこにされていては母方に救いを求めたくもなろう。そういう家庭崩壊で育ったがゆえの反動の面もあったんじゃないかと思えば、何だかしんみりした目でメフメトのこと見てしまいますね。まあその母親とは生まれてすぐに引き離されたのをいいことに、「俺のアンネ?フランスか…いやイタリア出身だったかな!?」と大法螺こいてたみたいですが。世界のスルタンとなっても嘘ついてまで見栄を張るのかい!と笑いました。

 小説ではムラトに捧げられたセルビアの王女マーラとわりと友好的だったみたいですが、それは母親と同じ出身なのとムラトに食われてなかったからかなと思いました。特に後者はデカいだろう。
 つまり親父のお下がりなラドゥと蜜月ってのは考えにくいな!と思ったが、別に私はメフメト総攻め派なのでメフ←ラドゥでも全然OK!むしろ愛がないほうが萌える!!(最悪の嗜好を晒すな)
 話はマーラ王女に戻しますが、まあ外国から貰ってきた嫁さんって、『ヴラド・ドラクラ』のイロナさんもそうですが、スパイでもありますしね。将来的にセルビアも物にしてやるぞー!!と考えていたメフメトにとっては、そりゃ一度お帰りいただくのがいいでしょう。逆にオスマンのスパイに鞍替えしていたからこそ、コンスタンティヌス11世との結婚を蹴ったとも考えられます。おかげでセルビアの軍も騙しうち徴兵できましたしね。
 でもメフメト、お馬ちゃんを馬刺しにしやがった!!この鬼畜!!!許さん!!!

 そんな感じで、大人に揉まれ続けた結果、したたかさを身に着けて再び即位したメフメト。
 親父とグルだったカリル・パシャも据え置きで、夢のコンスタンティノープルの奪取を目指します。
 わりと毒親な面もあった親父ムラトではありますが、彼があまり無駄に戦に打って出なかったおかげで経済が発達し、人材と資源が豊富に残された状態でメフメトは帝国を引き継げた。その面では間違いなくメフメトは親父に感謝してもいいところでしょう。
 親欧州派だった旧勢力カリル・パシャの存在もそうですね。反りが全く合わないし屈辱を味合わされていても、確かに有能であった彼を使えるところまで使ったところがすごくて、よく我慢したなあと思います。つまりメフメトとカリル・パシャは、ヴラドとアルブによく似た対立構造でもあり、似たように君主の絶対権力にひれ伏させているのですね。

 なので、このシーンは結構印象的でした。
 小説のメフメトは、敬語で、滅多に笑わず、冷ややかで感情をあまり覗かせない人物に描かれています。実際のメフメトもそのような感じだったらしいです。「愛されるより畏れられる」というフレーズも出てきますし、まさに『ヴラド・ドラクラ』のヴラドのキャラ描写そのままですね。
 あまりにも似たようなキャラづけが二人いると漫画としてはよろしくないわけで、『ヴラド・ドラクラ』のメフメトは結構フランクに書かれてますが、メフヴラって生き様がよく似ているような気がするな~~と漠然と感じていた私の感性はそう間違ってなかったのだなと思いました。つまりメフヴラは魂の双子。異論は認めない。私はそういうところにメフヴラの魅力を感じているのでした。

 そういうわけでメフメトは自国の勢力をまとめるためにも、コンスタンティノープルの征服に赴いたわけだったんですね。
 出陣のシーンの描写がめちゃくちゃカッコよく書いてあってお気に入りですね。特に章の締めの「前を行く二十一歳の若者は、背筋さえ動かさなかった。まるで、トルコの首都アドリアーノポリが、捨てたばかりの女でもあるかのようだった。」ってやつが痺れる!こういう文章が読みたくて私は総攻め好きなのだと言っても過言ではない。

コンスタンティノープルの攻防

 不幸にも西洋趣味のスルタンに目をつけられたビザンツ帝国。
 最初っから、もうダメだろな…この街は……という沈みゆく船に乗っているお通夜ムードだし、ギリシャ正教に誇りを持っている国民はカトリックと合同になるくらいならイスラムに征服されたほうがマシだ!とギャンギャン吠える日々を送っている。ヴェネツィア人とも反りが合わず、ジェノヴァ人は我関せず。
 なんというか色々な意味で終わっていて、コンスタンティヌス11世に同情を禁じえない……。
 人望だけは厚かったとひたすら強調されているのも涙を誘います。ここにまできて喧嘩すんなオマエら。

 無神論者なので、カトリックとギリシャ正教会の仲の悪さっていまいちピンと来てませんでしたが、この『コンスタンティノープルの陥落』を読んで分かったような気がします。特にそれをわかりやすく伝えてくれたゲオルギオスとウベルティーノの問答はとても印象深いシーンです。
 東ビザンツ帝国はギリシャ正教会という一点で多民族をまとめあげていた国だったわけで、カトリックに鞍替えするのは彼らのアイデンティティの喪失であると共に、侵略される以前に国自体がそれで瓦解してもおかしくないのだと、私はようやく理解できたのでした。しかもカトリックの締め付けは相当なものでしたから、それならまだ信仰の自由の余地があるイスラム国のほうがマシ!!という声があがるのも仕方ない気がしてきました。
 後にメフメトにコンスタンティノープル総主教に任命され帝国に残った保守派ゲオルギオスと、カトリックとの融和を謳いながら最後は帝国から逃げ出したイシロドス枢機卿の明暗の別れ方も興味深く思ったところです。信仰に妥協を許さなかったほうが救われたように私も思えます。このような立派な人の生き様を見ると、やっぱり神様は見てるところは見てるのか?なんて思ってしまいます。
 しかし、いくら伝達に時間がかかる時代とは言え、助ける気がさらさらないだろう……とカトリックのお役所仕事ぶりは読んでいるこっちもムカつきましたね!そんな中でもトレヴィザン提督やニコロ医師みたいな人たちがいて、いつの時代も体張って頑張ってくれるのは現場の人たちだよなあと改めて思いました。
 そしてカトリックのハンガリーがギリシャ正教国の多いバルカン諸国にやけに煮え切らない態度を取っていた理由もよくわかりました。つまりヴラド公、マジで色々な意味で詰んでいて人生がクソゲー。同情するぜ!!

 そして私はあまりコンスタンティノープルの攻防について詳しくなかったので、一方的に蹂躙されたのだろうなと今まで勝手に思っていましたが、意外と守りが強くて驚きました。3重の壁すげえなあ!もしかしてミナス・ティリスやゴンドリンの首都デザインってコンスタンティノープル参考にしてんのか?と何となく思った中つ国ファン。しかしそれだけに鍵の件があまりにもマヌケすぎて現場猫顔になりますね。どうして…。ジュスティニアーニが大戦犯すぎる。
 それでもさすがにメフメトのウルバン砲と船の山越えくらいは知っていたものの、その大砲の精度があまり芳しくなく、海戦はボロ負けしたことを知らなかったので、それで船を山越えなんてさせたのか!と腑に落ちました。兵力は圧倒的だから余裕~~と観戦してたのに航海技術の差でまさかのボロ負けしたメフメトくんのシーンが特に好きです。

こ↑こ↓。ちなみにプロが書いた同じシーンはこうである。

塩野七生『絵で見る十字軍物語』、ギュスターヴ・ドレ作

 セルフ公開処刑たぁ、たまげたなあ……

 この本を知る前に下書き描いちまって後には引けなかったんだよ!!(涙目)

 脚色というわけではなく、実際に浜辺に乗り出して応援していたのは確かみたいですね。
 結果は惨敗だったので、海軍曹バルトグルの首を刎ねよ!!とお怒りなわけですが、あっ!ここネトフリで見たやつだわ!!と進研ゼミの漫画気分になる。
 ネトフリのメフメト二世のドキュメンタリードラマ……親が見ていたのでたまにチラチラと見ていたんですけど、メフメトの俳優さんがあまりにも想像と違ったので、真剣に見てなかったんですよね。ちなみにヴラド・ドラクラと出会う前なので、なおさらあんまり大して興味なかったんですね。ちょっと後悔しております。今度またネトフリ再契約したときにじっくり見てみようと思います。しかし私の想像するメフメトはやはりオスマン帝国外伝のメフメトの俳優さんがピッタリなんすよね。あれぞ典型的トルコ顔であろう。
 ちなみに地下道を掘って云々のところも、あっここネトフリで見たやつだわ!!でした。メフメトくん、本当に思いついた策を実際に何でも試せる兵力と資源あって、こいつだけチートコード使ってんじゃねえか?って感じですよね。しかしジョン・グラントってネトフリだとイギリス人って言ってたんですけど、小説だとドイツ人って書いてあって、どっちだよ!!と思いました。個人的にはグラントってイギリスによくある名字っぽいし、おそらく最新の研究が反映されているだろうから、ネトフリ版のほうが正しそうだと思います。「戦争の裏にはたいていイギリス人がいるものだ」というナレに、それな!!と心底頷いたし。
 まあこのコンスタンティノープルの戦いに至っては、大砲を作ったハンガリー人のウルバンが一番MVPなわけですけど、後のスレイマン時代に故郷を服従させるほど影響が出ると思うと皮肉ですよね。そして大砲の音が一ヶ月強も鳴り続けたのも嫌すぎる。私なら発狂する。なんか最後の方は慣れちゃって熊ちゃん呼びまでしてましたけど、なんかコンスタンティノープルの状況……今の平和ボケ日本とめっちゃ似てね……?定期的にミサイルが飛んでくるし、中国船は頻繁に領海侵犯するし、助けてくれるはずのアメリカは今それどころじゃないと色々思い当たる節が多すぎて、読み終わった後わりとズーンってなりましたよね。気を引き締めていこうな日本!!

 というわけで西洋人どもが内輪もめしている間にコンスタンティノープルは陥落したのであった。
 もちろんただの鍵閉め忘れのラッキー勝利というわけではなく、オスマンが最後に畳み掛けた猛攻もすごかったです。特に、逃げ帰ってきた味方軍を「戻ってくんなオラァ!」とイェニチェリが斬りつけにかかるほどの死にものぐるい描写に、メフメト…こっわ……と心底思いました。こういうとこはやっぱサイコパス征服マシーンですよね。そんなメフメトだけど、応援もめちゃくちゃ熱入れてやっているから、飴と鞭の使い分けが素晴らしすぎる指導者だわ…と思いました。
 それに比べてコンスタンティヌス11世は人情味溢れる最期でカッコよかったですけど、あれが本当かどうかわからないって書いてありましたね。ラスト、コンスタンティヌス11世のマネして黒馬から白馬へ乗り換えて入城したメフメトも印象深く、そんな彼が敬意を払う人物ならこの小説のような人であってほしいなあと私は思いました。ローマ帝国が今も憧れの存在でいられるのも、この最期があるからなのだと強く思うので。
 メフメトは最初からコンスタンティノープルを首都にするつもりでいましたから、戦争中も結構ギリギリまで示談でどうにかならないか探っていたようなので、もちろん略奪も三日間の約束ブッチして当日で止めさせたようですね。いいところあるじゃんと騙されてしまうな!ビザンツ帝国側の後日談を読むと普通に奴隷堕ち祭りで全然そんなことないんですけど!殺すより奴隷にするほうがお金になるから思ったより殺しちゃって後悔したオスマン人という描写に、お、おう……となりました。

 しかし、本当にこんなに詳細な記録が残っていたってのが何よりすごいですよね!
 脚色なのかな~と思っていたところを他の本と合わせ読むと、そうじゃなくて事実だったってのが多くて結構衝撃でした。特にニコロ医師の正確性はすごいと書いてあって、そんな彼の記録が残っていて良かったと私も思いました。

そしてヴラド・ドラクラへ

 コンスタンティノープルを手に入れたメフメトは、さらに西方へ領土を拡大すべく、最終的にはイタリアまで物にしようと考え行動し始めて行ったようです。ローマ帝国を再現したかったんだなあ。
 しかし『ヴラド・ドラクラ』を読んでいる読者ならわかっていることですが、俺たちはただでやられるかよオラァ!とハンガリー・アルバニア・ワラキア・モルダヴィア・ロードス島に英傑が揃っていたのでした。なんといってもまだ一端の若者でしたからね、当然連戦連勝というわけにはいかないのであった。メフメトってあまり国内での人間関係にパッとしたエピソードがないなと思っていましたが、ここまでの遠征野郎だとそりゃそうかと思いました。途中で遠征しすぎて病気になっていて、ええ……と引きました。どちらかというと国外での人間関係が熱い人だったんですねえ。ライバルがいっぺえでオラすげえワクワクしてきたぞ!そして曾孫のスレイマン編が伏線回収して激アツになると!
 しかし、私ちょっと思ったんですけど、メフメトって昔の帝国の史跡を観光したくもあって征服してってませんか?コレ?今の時代に生まれていたらただの西洋観光ガチ勢で済んだかもしれなかった疑惑。メフメトおじさん現代に異世界転生旅行物語とかあったらウケそう。パートナーはメフヴラ民なのでヴラド公で、イギリスを最終観光地としよう!(申し訳程度のブラム・ストーカー要素)

 『メフメト二世 トルコの征服王』という本では、ヴラドについてあんまりページが割かれてなかったのですが、実はワラキアのほうから喧嘩を売ってたんですね。どさくさに紛れて領地を取り返していたから、ああ?やんのかぁ!?と乗り込んでみると、思ったよりサイコパスだった…やべぇよ…やべぇよ……という感じに書いてあって笑いました。私もヴラドのほうがサイコパスだと思う……でもそこが好き♡
 これ以上詳しく書くとネタバレになるので、またヴラド公の研究本を読んだら、続きを記事に書きたいと思います。
 しかしここらの史実を詳しく知ると、えっアイツ病死したの?よっしゃー!とメフメトが思わずガッツポ―ズとったというアルバニアのスカンデンベルクおじさまがカッコよすぎるので、大窪先生…ちょろっとでいいから描いてくれないかなあ…。

 というわけで感想は終わりです。メフメトのこと、もっと好きになれて楽しかったです!
 塩野先生のオスマン帝国シリーズはあと2冊あるので、それもいつか読んでみたいなあと思います。
 

Posted by tiriw

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